京がシャーペンに芯を入れてる間、あたしは黒板を見て今が何の授業なのか調べる。
わけの分からない数式が黒板に書き殴られていた。
数学の時間かぁ……。だから京はノート取ってるのか。
昔から数学は頑張ってたもんな。社会とかは嫌いだったよね。
「何ニヤけちょるが」
京はあたしにシャーペンの芯を差し出して笑った。それを受け取りながら、あたしは答える。
「京って、数学ばっか頑張ってたよなーと思って」
「今は化学も頑張っちょるが」
キランと目を輝かせ、得意気に話す京。
「綾は不真面目なくせに、テストはできちょったよな」
「実はやればできる子なんだよ」
「知っちょるが」
クスっと笑って、京はまた板書を始める。
あたしは京から黒板に、黒板から窓に視線を移し、頬杖をつく。
「……」
顔が、赤くなるのを感じた。



