生暖かい風が吹く午後。あたしは窓を開けて、机に突っ伏していた。
風があたしの髪を撫でる。心地いい。
「三波はまた寝ちょるんかぁ〜?」
先生の声が聞こえても、あたしは反応しない。
少しだけ顔を横にずらして、窓の外を見上げた。
薄い雲が空一面に広がっている。
……ひつじ雲って言うんだっけ?
そんなことを考えていると、ひとつしかない隣から声をかけられた。
「綾っ、シャーペンの芯切れたっ」
ぼそぼそっとしゃべるのは、隣の席に座っている京。
あたしは突っ伏したまま、ゆっくり顔だけ京に向ける。
「芯っ!」
真面目な顔してあたしの顔を覗く京に、笑いがこみ上げてくる。
「ふっ……ノート取ってんの?」
「だけん、芯!」
「分かったから」
あたしは体を起こして、机の中に入っているペンケースから30本入りの芯ケースを取り出し、京に手渡す。
「ありがと」



