取り出し口に出てきた4本の缶を腕にのせる。
霜焼けできそう……。冷たさを我慢しながら自販機に背を向けて足を踏み出す。
「きゃははは!」
前から高い声が聞こえて、自然とその方向に視線を移す。
あ……。
あたしが気づいたと同時に向こうも気づき、笑顔を見せた。
「はよ。今来ちょー?」
「……うん。京は?」
「ちゃんと朝から来たが」
ははっと笑う京の隣には、同じクラスの麻実(まみ)がいた。
さっきの高い笑い声は、麻実だったのか……。
「つかそれ、大丈夫かや?」
「え? あぁ。ちょっと冷たい」
京が指差すのは、あたしが抱えてる4本の缶ジュース。
苦笑いすると、京は腰に巻いていた薄手の黒いカーデをあたしの腕に置いた。
「え!? いいよ、大丈夫!」
「いーから」
京はカーデの上に4本の缶ジュースを置いた。
「これで冷たくないが」
にこっと笑う京に、思わず顔を赤らめそうになった。
「……ありがと」
「どういたしまして」
京は微笑んでから、麻実と売店に向かっていった。
「………」
あたしは缶ジュースが包まれたカーデをぎゅっと抱き締めて、足早に教室に向かう。
京は、近づきすぎず、離れすぎず、微妙な距離を保ちながらあたしに関わってくる。
それでいいと思う自分がいるのは確かなのに、もの足りないと思う自分もいる。
そんな自分に、吐き気がする。