「どこ行くのー?」
見慣れない森の中を歩きながら聞くと、楽しそうに京は口ずさんだ。
「ひ・み・つ・き・ちっ」
「秘密基地!?」
自分の目が輝いたのが分かる。
まだもう少し小さい頃。秘密基地を作りたかったけど、隠れられる場所なんて東京にはなかった。
「俺の秘密の場所、第2弾っ」
「すっごーい!」
見上げた大木には、家があった。本当に簡素だけど、確かに家だ。
「布団とかもあるし、電気もあるけん」
「すごいねー! みんな知ってるの?」
「知っちょる。人数多い時とかのためにみんなで作ったけん」
「へ〜」
「あとは、家出とかに……」
い、家出?
そう言った京の横顔が曇ったのを、綾は見逃さなかった。
「そっかー…」
触れないほうが、いいよね?