「京のことじゃろ?」

「うん」

「俺も」


ははっと笑って言う理一だけど、悲しみと不安が混ざった笑い方だった。


その悲しみと不安に、あたしは飲まれちゃいけない。


あたしは平静を保って話すと決めていた。


京をこれ以上傷つけたくないと思ったのと同じに、理一も傷つけたくないから。



「綾から話していい?」

「………」

「え? 何!?」


理一は驚いたようにあたしを見ている。


「や、綾が自分のこと名前で呼ぶの久々に聞いたけん、びっくりした」


え……。


「……あぁ」


多分昨日、京と話してるうちに無意識に戻っちゃったんだ。


「家だとたまにね、戻っちゃうんだよね」

「ははっ、いるよな、そういうやつ」


あたしは無言で微笑む。