あたしは玄関の前で呆然と立ち尽くしていた。


《約束守れなくてごめん。

 だけど

 約束を守ることを誓うよ。》



京が言った言葉は、京が東京に行く前にあたしに残した唯一の手紙、そこに書いてあった言葉だった。



守れなかった約束。
綾のそばにずっと一緒にいること。


誓った約束。
離れてもずっと綾を好きでいること。



京は約束をして、あたしへの愛を誓った。

あたしを信じて、夢を追いかけた。


「……っ」


今さら気づいた。


“待ってて”とは、たしかに言われなかった。

京はあたしを、信じてくれなかったんだとすら思った。


違う。全部、あたしの思い込みだった。


“待ってて”。そう言わなかったのは京の優しさであり、あたしを信じてるということだったんだ。


それだけじゃない。そんな簡単なものじゃない。


あの手紙に書かれた約束に、誓いに、“一生好き”という“綾”の誓いは、あったんだ。