だけど、理一と京の間で揺れるあたしには、そんな権利はないと思った。
何よりも願った京との再会は、理一を傷つけることだから。
傷つけたくない人がいる。
それなのに、京に逢った時、胸が高鳴るのを確かに感じた。
「あたし最低……」
顔を覆った両手の隙間から、涙が伝う。
「綾……」
朋の声が、遠くで響く。朋は何を言うわけでもなく、泣きじゃくるあたしの手をずっと握っていてくれた。
「落ち着いちょー?」
「うん、ごめんね」
「何言っちょるけん! いつでも電話してね? それに夏休みなんだし、遊ばんと損だけんっ」
「ありがとう。遊ぼうね」
朋はあたしの頭を撫で、笑顔でバイバイと言った。
「バイバイ」
朋を見送り、家に向かう。
何を考えても、どうしたらいいのか、やっぱり分からなかった。
あたしはまた流れる涙を拭いながら、蒸し暑い夕方の町をひとり歩いた。



