「あたし、何かマズいことしちょー?」


陽子と陸が教室を出て行ってから黙ってしまったあたしを、朋が心配そうに覗く。


「ううん、してないよ」


心とは裏腹に笑顔で答え、希望調査書を手に取った。



理一が言った「ちゃんと考えろよ」

陽子が言った「何でもいいよ」

陸が言った「文系より理数系」


進路の話だったのに、京の話に聞こえた。


触れなきゃいけないのに触れちゃいけない。

今の状態は、決していい状態ではなかった。



「綾、どーするが?」

「ん〜」


あたしは恋愛文系と書かれた文字を消して、<未定>と書いた。



未来は分からない。

まだまだ何が起こるか分からない、15歳の夏休み前。


それぞれの想いの先にあるものは、いったい何なんだろう。