「たまたま見かけただけだけど、すぐに京だって分かった」
「っ、それで!?」
律兄がソファーから立ち上がる。
「……別に何も。全然知らない人みたいだったよ」
「んなことねぇだろっ」
「何も、思わなかったよ」
あたしは淡々と言葉を発した。
────嘘。
あたしはあの時、言葉にならないほど感じるものがあった。
逢いたくて、逢いたくて、仕方がなかった京に逢えた、あの時。
忘れようとしてた“好き”という気持ちが、とめどなく溢れた。
だけどその時、確かにそこにいた京は、あたしの知らない京だったの。
……あたしにとって、離れた3年間はあまりにも長すぎた。
「あたしは京を、思い出にしたんだよ」
笑顔も、涙すら見せずに言い放った。
あたしの言葉に戸惑いを隠せず、何も言わないふたりを残し、京の家を後にした。



