律兄はコーヒーをひと口飲んで、テーブルに置いてからあたしを見た。
「……ほんとだけん」
あたしの心が大して驚かなかったのは、郁子の話を聞いた時から、ほとんど確信していたから。
あたしはただ、認めたくなかっただけ。
京が、東京から帰ってくる……。
リビングには静寂が流れ、それを壊したのはあたしだった。
「それが聞きたかっただけなの。……帰るね」
「……っ綾ちゃん!」
京ママに呼ばれ、踏み出した足を止めて振り向いたけど、京ママは言葉が見つからないのか、すぐ下を向いてしまった。
「……言ってなかったけど、あたし、東京で京に逢ったの」
京ママも律兄も驚いた顔であたしを見る。
「……は? いつだが」
「中3の修学旅行の時」
そう、忘れもしない。あたしは渋谷駅で京を見た。



