「座りぃ、話あるんじゃろ?」

「……」


あたしは無言でソファーに座った。


たったひと言だ。たったひと言聞けばそれでいい。そう思うのに、言葉が詰まる。


「……あの……」


決心はついたはずなのに、どう答えが返ってくるのかと思うと、急に怖くなった。


律兄は気を遣ってくれたのか、あたしの頭を撫でる。


「何かや綾。今日はやけに大人しいな」

「……」

「なっ、何か、お母さんまで緊張してきちゃったけん……。こ、紅茶でも淹れるけんねっ」


京ママがそそくさとキッチンに向かうのを見届けると、律兄は悪戯に笑った。


「ついに理一と付き合ったかや?」

「!! 違っ……」


律兄はじゃあ何?と言う顔で、あたしを見つめる。


「……っ」


あたし、何してるんだろう。


聞いて、どうするつもりだったの? もし帰ってくるとして、あたしに関係あるの?


……。


「ごめん、やっぱ帰……」


───トゥルルルル。


「あ。ごめん、家電だが」