「……」
あたしは立ち止まって、触れられた頭をさすりながら、クラス発表の紙を見に行く理一の背中を見つめた。
……春だなぁ。
校門から校舎の入口まで続く道の両側に、たくさんの桜が咲いていた。
春風が吹き、たくさんの桜が舞い散る。
「わっ」
不機嫌になった風が、直したばかりの髪を乱す。
前、見えない……。
たくさん散る桜を前に、まるで違う世界に来たようだった。
「綾!」
突然、理一に名前を呼ばれ、散る桜の中で目を凝らして声のするほうを見る。
淡いピンクの中に、シルバーの光。
「同じクラス!!」
彼は笑った。
桜吹雪の中で、幸せそうに。