まだ少し蕾が残る桜の道を歩きながら、新しい環境に入ることに喜びと少しの不安を抱え、いよいよ今日、高校の入学式。
「しっかし驚くよね。あんなに勉強してなかったのにさ」
あたしは呆れたように、桜の木を眺めながら言う。
「え? 何がかや?」
ホントに分かってないな……。
「まあ、いいんだけどさぁ。その髪の色は何を考えてるの?」
「え? カッコいいじゃろ?」
「……先輩に目、付けられても知らないからね」
あたしはそう言ってから携帯のアドレス帳を開き、陽子に電話をする。
シルバーに染まった、理一の髪を横目で見ながら。
「あ。来た」
「こっちだけん!」
数十分前に電話していた陽子が陸と共に、“入学式”と書かれている看板の置かれた校門の前で、手を振っていた。
進学校か、普通レベルの高校。この田舎では、進学する高校は二択だった。通学手段をバスにしたら、もう少し進学先は広がったんだけど。
そこまでして通いたい高校ではなかったし、歩いて行ける距離で、みんな一緒がいい。
そんな理由で、中学からさほど距離の変わらない高校を選んだ。
しょうもない理由。でもあたしたちにとっては、充分すぎる理由だった。