「どーぞー」
「お邪魔しまーす」
「とりあえずリビング行っちょって。あっち右」
理一が指差すほうを見てから、適当に返事をした。
「はーい」
初めて来た理一の家。リビングに入ると、少し物が散乱していた。
することがないのでテーブルの上を片付けていると、後ろから感心する声がした。
「おー、すごいけん。さすが女の子だが」
「や、することなくて」
理一は少し微笑んで、手に持っていた服を綾に渡す。
「制服汚したら困るけん。着替えて」
あ。そっか。
黙って受け取ると、理一は洗面所にいるからと言って部屋を出ていった。
黒いラグランTに袖を通すと、ふわりと香る香水。
「うわ……」
この服ヤバい。当たり前なんだけど、理一の匂いがする。
「あー……」
何やってんだろ綾……。
今さらだけど、理一の家来ちゃって……ダメじゃん……。
「綾ー、まだー?」
理一の呼び声に我に返る。
しょうがない。そう言い聞かせて、何も考えないようにして洗面所に向かった。



