人混みの中、綾はひとりで泣いていた。
カップルがたくさんいた。みんな幸せそうに笑って、手を繋いで寄り添いあって、この場所は恋人たちの場所だった。
綾にはふさわしくない、そう思った。
「けぇ……」
……京。お願いだから、早く戻ってきて。
このままじゃ負けてしまう。
認めてしまう。
知らないふりを、できなくなってしまう。
あなただけの愛さえあれば、それでよかったのに。
「……どうしよう……」
キスされた額が、熱を帯びている。
……もし、流れない星たちに願えるならば。
京に逢いたい。
理一を好きになる前に、京に逢わせて。
今すぐに、“今”逢わせてください。
静かに流れる綾の涙を、星だけが見ていた。
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