「なぁ。わざと?」
理一の髪が、花火の光で鮮やかに輝いた。
「……何が?」
「そうやって、知らないふりするのだけん」
真面目な顔をして言う理一に、言葉が出なかった。
理一は、全てを見抜いていたんだ。知らないふりをして、あらゆる痛みから逃げていた綾に、気付いていた。
「綾と京のことを知らないから、気付いたが。綾が無理しちょーこと」
……やめて。
「知っちょる奴は、綾と京が別れるなんて思わんから、綾の弱さに気付かん。強さに気付かんが」
「やめてよ!!」
目に涙が溜まっているのが分かった。理一の顔が、ぼやけたから……。
「やめて……」
優しさなんか、いらない。
京がいない悲しさしか、思い知らされないから。



