夏風。生暖かい、時に熱風とさえ感じられる流れる空気。
すっかり夏だ。
「「「夏休み───!!」」」
教室のドアを開けると、かなりテンションの高い叫び声が聞こえた。見ると、クラスメイトたちは近づく夏休みの計画を立てているみたいで、輪を作って盛り上がっていた。
「何? どんだけ嬉しいのよ」
みんな明らかに浮かれている。まるで笑顔が絶えない。
綾まで嬉しくなってきたし……。だからこのクラス好きなんだよね。
「ねーっ! 夏休みみんなでお泊り会しよーっ」
テンションが上がって綾も輪の中に突っ込む。
「ぎゃあっ!!」
同時に叫び声を上げた。
「り……りりり……律兄!?」
なぜかそこには女子に囲まれる律兄の姿があった。
「おー、綾っ。暇だから来ちゃった」
「学校は!?」
「もう休みだけん」
絶っ対っ嘘っ!!
気になって、我慢できなくて来たに決まってる!!
怪訝な顔で律兄を見ると、律兄は肩をすぼませ、舌を出して笑っていた。
……何でこう、我が道を突っ走れるんだろ……。
「ひゃあぁ!!」
突然、首筋に冷たいしびれが来たのに驚いて、奇声を発した。
「なにっ!?」
後ろを向くと、理一が悪戯っ子みたいに笑いながら綾を見ていた。