黙って振り向き睨むと、理一は困ったように笑った。
「ごめん。……つい、ノリでしちゃったけん」
ノリ!? ノリでほっぺにキスすんの!?
ああ……何かもう考えたくない。悲しくなってきた。
「えっ、嘘ごめんて!」
「は!? もういいって!」
なかばキレ気味に言うと、理一は笑顔を消して眉を下げ、耳の後ろをかく。
「だって泣かれたら、謝るしかできんが……」
理一の言葉に驚いて頬に触れると、確かに綾は泣いていた。
嘘……何で!?
焦って涙を拭うと、理一が制服のワイシャツの袖で、綾の顔を拭き始めた。
「まじゴメン……彼氏おるの知っちょったんに」
「……理一がそんな人だとは思わなかったよ」
「ノリで生きるのやめるけん」
困り果てた理一を見て、それまで悲しかったのに、なぜか可笑しくなってきた。
「え。何ニヤけちょー」
「え。別に」
「出たよ、お得意の“え”」
「ふふふっ」
「よかった。笑った」
理一が笑った。本当に幸せそうな、笑顔で。
……もういいや。
何か許せるし。ノリでキスしたんでしょ。何か今楽しいから、許すよ。
「アイス奢ってくれたら許してあげてもいいよ」
「おーっ! 何でもするが」
そう言った理一は、わざわざ学校を遅刻してまで綾にアイスを奢ってくれた。
淡いブルーの色をしたソーダ味。今日の空みたいな、蒼い空模様のアイスだった。



