「はにゃ? 綾?」
気の抜けた声。一発で誰だか分かった。
「律兄……」
「なしたのよーっ、俺んちの玄関の前でっ」
陽気にステップを踏みながら、律兄は綾に近づいて来た。変わらないオレンジ色の髪は、月の光にも輝いて見えた。
「来てみたんだけど、……何か入りたくないっていうか…、何ていうか」
律兄は座っていた綾を立たせる。その表情は、いつものしまりない顔ではなくなっていた。
「とりあえず入り。話はそれからだけん」
「……ん」
やっぱり律兄には分かるんだ。綾に何かあったんだなって。
嬉しいけど、複雑……。
「たらいまーっ」
元気に言ったかと思うと、いきなり大声を出した。
「ババアッ!」
えぇ!?
「誰がババアかやぁ!」
キレ気味な京ママがリビングから飛び出してきて、あまりの恐さに後ずさってしまった。
「最近、小ジワ気にしちょるけん」
ボソッと耳打ちされた内容に、つい笑ってしまう。
「はっ! 綾ちゃーん!」
綾の存在に気付いて、京ママはさっきまでの形相が嘘のように笑顔で迎えてくれた。
横で律兄が笑いを堪えていて、綾まで堪えることになったのは言うまでもなく。
律兄の和ませ方は、いつも無茶ぶりだよ……。



