「綾、ごめん……今日」
帰る準備をしていた陽子が駆け寄ってきて、申しわけなさそうに綾を見つめる。
「陸でしょっ? ばいばいっ、おつかれぇ〜っ」
「ごめんねっ、また明日」
「うんっ」
陸と陽子に手を振って、綾も帰る用意をする。
「なん? 帰るんかや、綾」
机にかかる影に気付いて前を見ると、和也がジュースの缶を横に振りながら立っていた。
「うん」
今、綾はかなり無表情に言ったと思う。
「ふーん。……一緒に帰る?」
「……え」
しばらくの沈黙。お互い見つめ合って固まっていると、同時に吹き出した。
「何かや綾〜。笑わすなやっ」
「いや、和也でしょっ」
和也は不思議だ。どんな空気も、和ませる。暖かい陽だまりみたいな人。
「で? 帰る?」
「ん。帰る」
あ……ふたりでかな……?
「……ちょっと話しあるけん、ふたりでいい?」
「ああ……いいよ」
一瞬、あることが頭をよぎった。
「じゃあな〜」
和也がまだ残っている人たちに手を振る。
「おー。おつかれー!」
理一と目が合いすぐ逸らすと、和也の視線を感じて足早に下駄箱に向かった。



