「ちょっ……理一!?」
理一はただ突っ立って、綾が走って来た道を見ている。
『どうした!? 1組のアンカーが走らない非常事態!』
「おい理一! 何やっちょーか!!」
向こうから和也たちの声が聞こえる。
「理一っ! 何してんの!? 早く走ってよ!」
必死に理一を叩いても、ビクともしない。焦って後ろを振り向くと、5組が近付いて来た。
「理一ってば!!」
叫ぶと、理一がやっと綾を見た。何も言わない理一を見つめると、内緒話をするみたいに、手と顔が近付いてきた。
――ちゅ。
「見てて」
そう理一が悪戯っぽく笑った瞬間、5組がアンカーにバトンを渡したのが見えて、理一は綾の手からバトンを受け取り、同時に走った。
綾はただ呆然と、理一の背中を見ていた。
『1組アンカー、5組アンカーにバトンが渡ったと同時に走った! 一騎打ち目的か!?』
アナウンスが響き渡る。
やっぱりアンカーだけに、5組も速かった。綾はいつのまにかトラックを突っ切って、ゴールに向かっていた。
息を切らして、ゴールを見る。
ゴールと書かれた真っ白な長い紐が、揺れた。
『1着! 2年1組!!』



