『京は東京に行った』
確かに律兄はそう言った。
東京……? ああ……だから今日いないのか。
「いつ帰ってくるの?」
「……分からん」
「……中学校の入学式までには帰ってくるでしょ?」
律兄は首を振った。
「じゃあ、いつ?」
「しばらく帰ってこんが」
「しばらくってどのくらい?」
律兄がつらそうにしてるのは気づいていた。
だけどそんなことは、どうでもよかった。
「分からん……いつになるか分からんけん」
「何でよ!!」
もう分かっていた。律兄のあやふやな解答に、直姉の言葉に、京ママの謝罪に。確かに京がいなくなったことが見てとれた。
「……京は東京の中学に行くけん。勉強しちょーって。親父に頼んで、親父と一緒に東京に住むことになったが」
言ってることは分かっているのに、気持ちがついてこない。
何でそんなことするの? 勉強なんて、どこででもできるじゃん……。
「……ごめんね……綾ちゃん。もっと早く言えばよかったんに……京に口止めされちょって……」
口止めって何……?
京は……綾に黙って行きたかったの?
綾は、京の何だったの?
理解できない京の行動に、綾はただ、茫然としていた。



