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「綾ー?」
家の仏壇に両手を合わせていると、和室の襖が開いた。目を開けて振り向くと、パパが顔を覗かせている。
「何?」
「何してるの?」
「ママと話してるの」
「何の話?」
「内緒ー」
悪戯に笑うとパパがふてくされる。それがまたおかしくて、クスクスと笑った。
「じゃーママ、またね」
ママの写真に向かって話しかけてから立ち上がり、少し痺れた足の感覚に長いことママと話してたんだなと感じた。
和室を出ると、パパは綾の頭を撫でてくる。見上げると、嬉しそうな笑顔。
「最近ママと話すね」
「えへへ」
「綾はいい子だぁねぇ〜」
「……パパ、最近オヤジくさくなった」
ショックを受けてるパパを置いて、部屋に戻る。
「ママに会いたいなぁ」
カーテンを閉める前にガラス越しの夜空を見上げた。真っ暗の空から降る静かな雪は、部屋の明かりに照らされたわずかな範囲でしか見えない。それが少し、寂しく感じた。
冬は、ママがいなくなった季節。
ママを奪った冬は嫌いだけど、ママを1番近くに感じるのも冬だった。だけどもう、あんなに悲しい思いはしたくない。
そう誰よりも思うのに。
まさか、また冬に大事な人を失うなんて、思いもしなかった。



