「ねー、京はさ、何になりたいの?」
「…………んー」
「誤魔化してもダメ!」
京は吹っ飛ばした教材を見つめ、綾も同じように見つめる。
「……先生とか?」
聞くと、京は立ち上がって床に散らばる教材を拾い集めて机に置いた。何冊もある分厚い教材。京はその表紙を撫でながら、ポツリと呟いた。
「……医者」
「へ? お医者さん!?」
「……ん……まあ」
「べ、弁護士一家から医者が出たらすごいね……」
京、あんなにサボってるくせに頭いいもんなぁ……。
なれるわけないと思わないのは、綾の中で京は誰よりも何よりも1番だから。
なれるだろうな。そう思った。
「すごいね」とそれ以上何も言わない綾に、
「家族には医者になりちょーって、ちゃんと言ったけん」
とだけ、京は教えてくれた。
「綾ちゃーん」
1階から綾を呼ぶ声がする。
「京ママだ! お手伝いしてくるねっ」
「ん、いってらっさい」
微笑む京に手を振って、リビングに向かった。
この時、綾が「京は何で医者になりたいの?」って聞けば、未来は変わってたのかな?



