その日はずっと自習で、別の学年の先生が帰りの会に顔を出した。
「先生!! 綾は!?」
堪らず叫ぶと、先生は眉を下げて視線を逸らした。その行動に、不安がこみ上げる。
「……落ち着きんさい。まだ何も連絡はないけん」
もう3時間も経っちょるんに……。
何も分からないまま俺たちは帰された。
俺は今すぐに綾に会いに行きたかった。会って、何でもないって言ってほしい。
綾の笑顔が、見たい……。
「綾……発作だったんだって」
帰り道、陽子がそう言っていた。
発作って……? 何でそんなことになんだよ。確かに最近元気なかったけど……。
綾……病気なのか?
それから俺は、答えが分からんまま、不安な夏を過ごした。
綾は発作を起こしたきり学校には来んで、たまに来る手紙には「元気だから心配しないで」と何回も書かれちょった。
綾が急にいなくなって、不安になって、綾の家に何度も行った。綾からきた手紙を何度も読んだ。
そんなことしたって綾の存在を感じることなんて無理だと分かっちょるのに、どうしてもそうしてしまう。
綾に逢いたい。
目から零れる綾への気持ちは、どうしても止まらなかった。
きっともう、この時決めちょったんだ。
俺の毎日は、綾が全てじゃった。
どうしようもなく綾が好きだと感じた、12歳の夏。
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