「な……何で木から落ちてくるの!? ていうか大丈夫ですか!?」


混乱しながらも慌ててしゃがみ込み、声をかけてみる。隣にいたパパも驚いていた。


「いってぇーっ!」


男の子は急に起き上がり、大声を出した。ビクッと反射的に体が揺れる。


急に何!?


目を見開いたままでいると、男の子が綾に気づいた。


「あ。ごめん、驚いたかや?」


驚いたなんてもんじゃないよ!


「君、大丈夫!?」


そばに駆け寄るパパの視線の先には、男の子の足や手に見える流血。


「ん? こんなん大したことないけんっ」


その男の子は明るい声で返事をする。


大したことないって……その怪我で……? 綾だったら痛くて泣く。


そう思いながら流血している足を見ていると、急に視界が暗くなった。


「見ない顔だけん」

「!?」


男の子が綾の顔を覗いていた。突然のことにびっくりして、後ろにのけ反る。


「いくつ? 11くらいかや」

「ひ、人にものを尋ねる前に、自分が名乗ってくださいっ!」


驚かされた綾は少し怒り気味に言ってしまったのに、男の子はきょとんとしてから、自分のことを指差した。