「だいたい回ったね。あと2、3件かなぁ……」
「……森と田んぼと家しかない」
唖然としていると、パパが恐る恐る綾のほうを振り向いた。
「も……もう少し先に行けば学校もお店もあるよっ」
本当かな。どんなに先を見ても、森と田んぼしかないよ?
ふと、隣にある木に目をやった。
───大きい木……。
その時、木の上にいる何かの気配に気付いた。
今動いたの、何かな?
「――っ! リスッ!」
そう叫んだ瞬間、リスではない、何なのか分からない黒いかたまりが、木の上から落ちてきた。
「!?」
とっさに頭を抱えて、目を強くつぶる。
───ドスンッ!!
大きな音に恐る恐る目を開けると。
……人っ!?
目の前には、仰向けに寝転がった男の子がいた。