「……ん?」
瞬間、京の顔が近付いて、前髪を掻き分けられたと思ったら……おでこに、柔らかい感触。
「……!!」
京はゆっくり離れて、黒目がちの目で綾を捕らえた。
「なっ……なななっ!」
「……何だけん」
何だけんじゃないよ! いきなり何するの!?
パクパクしていてると、京はフッと笑って頭を撫でてきた。
「寝よ」
京に引き寄せられて、ふたりでベッドに寝転ぶと、どちらからともなく手を繋いで、「おやすみ」とささやいた。
ねえ、京。
綾はこの時、ただただ幸せだったよ。
京の部屋の天井にある大きな窓から静かに降り続く雨の音が、綾には今でも聞こえる。
京にされた初めてのキス。額だったけど、恥ずかしかったけど、本当は嬉しかったの。
この時を、綾は一度だって忘れたことなんてない。
そして、夏になったね。
――綾の病気が、バレた夏。



