冬の太陽が雪を溶かす2時頃、みんなが帰っていった。綾はというと、まだ寝ている。

そのそばで、母さんは作ったケーキを鼻歌まじりに切り分けていた。


「ケーキ食べる?」

「綾、起こしてもいいかや?」


母さんは「ウーン……」と綾を見ながら言って、パッと笑顔になった。


「いいけん! もう充分寝たけんねっ」


そう言うと、母さんは陽気にケーキを皿に取り出し始めた。


「綾ー、綾! あーやっ! もう3時すぎっ」


細い肩を揺さぶると、綾がゆっくりと目を開けた。


「……け、い……」


綾は俺を瞳に映すと、ホッとしたように笑みを浮かべた。


「もう3時だけん」

「……ほんとー…?」


綾はまだ眠そうな目を擦りながら起き上がった。


……気のせいかや? 綾が一瞬、不安な顔をした。


「綾ちゃんおはよう。よく寝ちょったねぇ。昨日ほんとに眠れなかったけんね」


綾はボーッとしながら母さんを見ていたが、暫くしてはっきりと目が覚めたのか、恥ずかしそうにタオルケットを頭からかぶる。


……座敷童がいる。


「心配かけてごめんなさい」

「いいけん! さ、ケーキ食べんさいっ」


綾はチラッと俺を見たかと思うと、いつものように顔を赤らめて苦笑いをした。