そんなことがあるんじゃろうかと思いながら足音を忍ばせて、綾に近付く。
大きい瞳は瞑られ、代わりに長い睫毛が白い肌に影を落としていた。
スー…と寝息をたてて、ぐっすり眠っちょる。
俺の手を、綾の手にかぶせる。
トクントクンと、鼓動が刻まれていた。
……俺はいつから、こんなに好きになっちょった?
俺だけを見てほしいと。
俺だけのものだと。
俺だけを好きになってと。
いったい、いつから思うようになったんじゃろう。
きっとこの気持ちは知らず知らず、俺さえ気付かない速度で大きくなっていたんだ。
……綾は俺をどう思っちょるんじゃろう。
恋をした。たったひとりの女の子に。
それは確かな、現実。
綾の気持ちを、知りたい……。
俺はいつの間にか、綾のそばで眠っていた。



