もう太陽が1番高いところまで昇ってる……。
リビングに面する大きな窓に手をついて、どこまでも高い空を見上げていると後ろからドアの開く音。
振り向くと、寂しげな表情をしたパパが立っていた。
「綾。トイレ行った? もう出るよ」
「うん。もう行ける」
笑顔で言うと、つられたようにパパも微笑んだ。
「日が暮れる頃までには着く?」
玄関のドアを閉めながら、隣にいるパパを見上げる。
「着くよ、多分ね」
「そこ多分なの!?」
冗談を言いながら少し話し、ゆっくり10年近くお世話になった家を見上げた。
近所の家の外観とは少し違う、レンガ調の可愛らしい家。
ママが、この家じゃなきゃ嫌だと即決したらしい。
綾は覚えてないけれど、パパが困ったように、でも幸せそうに話してくれたことを思い出す。
「……今までありがとー」
ぶっきらぼうに言うと、エンジンがすでにかかった車に向かう。
やっぱり涙が出てしまう。つらいわけじゃないのに。
ただどうしても、ママをこの広い家にひとり置いてけぼりにしてるようで、どうしようもない感情が溢れ出るんだ。