「はい、もしもし」 電話の相手は、大体予想がついていた。 僕が病院に顔を出さないから、電話をかけてきてくれたんだと思って、少し浮かれた気分で電話に出た。 「ちひろちゃん?あってるでしょ」 「何で」 「そりゃあ分かるよ、電話番号教えたし。僕がなかなか行かないから待たせてるんだよね。ごめんね、仕事が忙しくて」 「そうじゃなくて」 ちひろちゃんの声が低い。 僕が今まで聞いた声の中でダントツに低く、機嫌が悪いことがすぐに分かった。