螺旋階段を降り、ひたすら歩いているとモモと鉢会った。
どうやらわたしを迎えにいこうとしていたみたい。
『おはようベンタ。からだは平気?痛いところはない?』
駆け寄ってくるなり、遠慮がちな手つきでわたしの肩や背中を撫でるモモ。
だんだんとすみずみまでたしかめるような動き変わっていき、あまりに過保護なモモに不覚にも癒されてしまう。
おかげでほんのちょっぴり怒りが和らいだ。
「おはようモモ。うん。ちゃんと治ったよ」
『わぁ、ほんとうだね。ベンタしゃべってる』
うれしそうに顔をほころばせ、わたしをぎゅうううと腕の中に。
『昨晩はベンタのことが心配で心配で、何度も様子を見にいこうとしたんだ。でも、ようやくおとずれた静かな時間を邪魔してはいけないとおもって、毛布にくるまりながらがんばって我慢したよ』
ふにっと、そのくちびるをわたしの目尻に押し当ててくる。
あふれて止まらない感情の行き場を探しているようなキス。
まるで長い時間飼い主と離れていたわんこみたい。
『いたかったよね……くるしかったよね……。なにもできなくてごめんね。愛しているよベンタ。無力なボクを、どうか見捨てないで……』
ほろほろと涙をこぼすモモ。
喜んだり、心配したり、泣いたり。
びっくりするくらいわたしへの愛だけで形作られた感情をあらわにする姿がなんとも健気で、おもわずよしよしと頭を撫でていた。
モモはキャストたちのなかで唯一、わたしの苦しみに心から共鳴し、寄り添ってくれる。
ねぇ、成生くん、こんなにやさしい人を疑わなきゃいけないのかな。



