ユアンが羽ばたき、王太子達の頭上へ至る。
 ミリエルを抱き上げたまま、威圧的に王太子達を見下ろすユアンに、王太子達は顔を真っ青にしてうろたえるばかりだ。
「神竜様、どうか、どうかこの国に罰は……」
「別に害する気はない。勝手にすればいい。だが、この国にもう聖女は生まれない。したがって守護する気もない」
 害する気はない、と言って一瞬顔に喜色を浮かべた王太子ルキウスだったが、次に続いた言葉に目を丸くした。
 宰相が「どういう、ことですか」と震える声を出す。
 その言葉に、ユアンが悠然と笑みを浮かべて、そしてなぜか、ミリエルの頬にほおずりをして口を開いた。
「聖女は……聖女の生まれ変わりは僕が攫っていくから」
 その言葉に、その場の視線がミリエルに集中する。
 その意味がわからないほど、ミリエルは鈍感ではない。