客足が落ち着き、ふぅ、と一息ついて、隣を見る。



「……ちょっと貸して」



バーコードの読み取りに手こずる王子様もどきくんに代わり、ピッピッと素早くスキャンした。



「ありがとう。さすがはベテラン図書委員さん」

「いーえ」



甘い笑顔に動じず、委員会で培った営業スマイルでスマートに対応。


なんでここに七瀬くんがいるの? と思ったそこのあなた、私も同じ気持ちです。

なぜ図書委員でもない帰宅部の彼が、窓際の席ではなく返却受付の席を陣取っているのか、不思議ですよね。


実は不運なことに、ほんの10分前、返却を担当していた女の子に急用が入ってしまって。

私1人で回していたのだけど、見かねた七瀬くんが『暇だから手伝うよ』と言ってくれて、お言葉に甘えたというわけだ。



「これ面白いね。レジの人になった気分」

「ははは、それは良かったですね」



ご機嫌になった彼が「いらっしゃいませ〜」と来室した生徒にご挨拶。その隣で、驚く生徒に苦笑いで会釈する私。