現実を突きつけられたところで、カウンターで貸出手続きを行い、図書室を後にした。



「今日は、無理そうかなぁー」



教室までの道のりを歩く横で、王子様もどきくんが外を眺めている。


なんで着いてくるの……と思ったけど、隣のクラスだったのをすっかり忘れてた。


うう〜っ、視線が突き刺さる〜〜っ。

でも今のところは男子だけだから、校舎裏に呼び出されて問い詰められる未来はなさそうだ。



「あの……そんなに見たいんですか? 彩雲」

「はい。どうしても叶えたい願いがあって」



金曜の夜、虹色の雲──彩雲について調べてみた。


吉兆、いいことが起こるサイン、幸運の予兆。

彼が話してくれたのと同じで、スピリチュアルな意味でも縁起がよいとされているらしい。


虹色っぽい色だから、パッと見珍しい現象だと思われがちだけど、条件が合えば季節問わず見ることができるのだそう。



「昔、おばあちゃんと一緒に空を眺めながら探してたんです。で、見つけたら写真撮って、裏に起きてほしいことを書いて。コルクボードに貼って飾ってたんです。毎回遊びに行く度に新しい写真もらって、アルバムパンパンになってたなぁ」