9月某日、私は幼馴染兼“執事”の男の子と土手を歩いていた。

 昼間はまだ気温が高いものの、こうして夕方になればすっかり秋の香りがする。

「ねぇ優心君、もう秋だね。紅葉がたくさん流れてるや。」

「そうですね。……ところでお嬢様、紅葉が見たいのは分かりますが、そんなに身を乗り出されると落ちてしまわれますよ。」

「もうっ、優心君は心配性だなぁ。大丈夫だよ、小学生じゃないんだから落ちたりなんてしない――」

 確かに土手は滑りやすくなってるけど、落ちる事はないだろうな。

 ……なんて思ったのが命取りで。

「お嬢様……本当にあなたは危なっかしいですね。」

「……ごめんなさい。」

「分かればよろしいんですよ。」

 川を流れる無数の紅葉に気を取られていた私は、危うく転びそうになってしまった。

 そのところを私の執事こと優心(ゆうしん)君が間一髪で支えてくれて、泥だらけにならずに済んだのだ。

 それでも少し砂が跳ねちゃったみたいで、優心君はやれやれと言ったように口にする。

「帰ったら念入りに洗濯しなければなりませんね。お嬢様、怪我にだけはお気をつけください。」