翌朝。
日が昇ると、私はすぐに起きて身支度を整えた。

どんなに止められても、尊を助けに行くつもりだった。

お姉ちゃんも何も言わずに着替えを始める。

「まったく…。二人とも頑固なところまでそっくり」

呆れたように言って、お母さんとお父さんも出かける準備をする。

そしてお父さんの運転で、昨日と同じ登山口の駐車場までやって来た。

「こっちよ」

私は昨日のことを思い出しながら、みんなを道案内する。

「絶対に離すなよ」と手を繋いでくれた尊の顔が頭に蘇り、また涙をこらえた。

すずらんの花をたどり、川に行き着く。

「あ、この川だわ!間違いない」

お母さんが駆け寄ってかがみ込む。

「あの時と同じ川の流れ」

そう言って両手で水をすくい、ゆっくりと口にした。

「美味しい。あの時、私と鈴と蘭を助けてくれてありがとう」

呟くお母さんの隣でお姉ちゃんもしゃがみ、同じように水を少し飲んだ。

私達はさらに上へと登ってあの石碑にたどり着く。

「日の本の 大和の国の 鎮とも 座す神かも 宝とも 生れる山かも」

あの言葉を呟くと、大きな地鳴りと共に地面が揺れ始めた。

「キャー!」

思わず悲鳴を上げるお姉ちゃんとお母さんを、お父さんが抱きしめる。

私は動じることなくじっと岩肌を見つめていた。

やがて地鳴りと揺れが落ち着くと、昨日と同じ滝が眼前に現れた。