「じゃあ、十年前の襲撃は何だったんだ?」

 クライン公爵家の一件を話題に出し、リエート卿は『何のためにあんなことを?』と尋ねる。
確かに四天王の成長を待ってから仕掛けるのであれば、わざわざ騒ぎを起こす必要はない。
戦力を蓄えるという意味でも、静かにしているのが最善だろう。

「あれは恐らく────魔王健在の意思表示と牽制、それから小手調べかと思います。数十年の間に、人類も色々変わってきていると思うので」

 恐らく魔王の性格を一番理解しているであろうルーシーさんの返答に、リエート卿は顔を歪める。

「……俺達はそんなつまらない事情に巻き込まれたのかよ」

 当時の光景を思い出しているのか、リエート卿は眉間に深い皺を刻んだ。
明らかに納得いかない様子の彼を前に、兄は一つ息を吐く。