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 ────クライン公爵家(我が領)で魔物の大群と戦ってから、約一ヶ月後。
季節はすっかり冬に変わり、冷え込む日が続いていた。
大半の貴族が自分の領地へ引っ込む中、俺はグレンジャー公爵家を訪れる。
というのも、魔物の大群に関する後処理がようやく終わったから。
我が家を救うため、随分と無理をさせてしまったニクスやリディアに改めてお礼を言おうと思ったのだ。

「繰り返しになっちまうけど、二人とも本当にありがとな」

 屋敷の客室にて、グレンジャー兄妹と向かい合う俺は深々と頭を下げる。
本当はソファから飛び降りて土下座したいところだが、あまりやり過ぎると相手の負担になるため我慢した。
お人好しのリディアなんか、特に。
『ニクスは高笑いしながら頭を踏んづけてきそうだけど』と思いつつ、おずおずと顔を上げる。
すると、ポカン顔のリディアとうんざり顔のニクスが目に入った。

「お前なぁ……一体、何回礼を言えば気が済むんだ」

「えっ?いや……やっと後処理が終わったら、改めて挨拶に伺うべきかな?と思って……」

「お気持ちは嬉しいですが、今はご家族との時間を大切にされては?」

「そ、それはもちろん大切にするけど……お前らの顔も見たかったし……何より、こういうことはきっちりすべきだろ?」

 『親しき仲にも礼儀あり』という諺を唱え、俺は二人の顔色を窺う。
確かにクライン公爵家を救ってもらったあの日から、俺は何度もお礼を言ってきた。
口頭ではもちろんのこと、手紙やプレゼントでも。
一応、感謝と誠意を示してきたつもりだが……ちょっと、しつこかったようだ。