「直にグレンジャー公爵家から、応援が来ます。それまで、もうしばらくお待ちください」

 そう言うが早いか、兄は結界外に向かって氷結魔法を放つ。それも、かなり強力な。
慌てて魔力譲渡の準備に取り掛かる私を他所に、周辺の魔物は一様に凍りついた。
時が止まったかのような錯覚を覚えるほど、一瞬で。反撃する暇もなく。

「に、ニクスくんの魔法には毎回驚かされるな……」

「ええ……将来が楽しみね」

 大人顔負けどころの実力じゃないのか、クライン公爵夫妻は顔を引き攣らせている。
『強すぎて、何も言えない……』と苦笑いする彼らの前で、私はいそいそと魔力譲渡を終えた。
と同時に、兄が再び大技を放つ。
討伐隊と合流したことで巻き込む心配(後顧の憂い)無くなった(絶たれた)からか、彼の勢いは止まらない。
地面を凍らせるだけじゃ飽き足らず、天候まで変え始めた。
あくまで一時的なものとはいえ……雪や雹を降らせるなんて、普通じゃない。