愛馬、シャイロのいななきで、テスは物思いから呼び戻された。
「ごめんなさいね、ぼうっとして。そろそろ戻りましょうか」
テスは馬の首すじをかるく叩いて、やさしく語りかけた。
厩舎に戻ると、ちょうど厩舎係のロジャーが馬たちに夜のまぐさを準備しているところだった。
お帰りなさいませお嬢さま、と陽に焼けた顔に笑みが広がる。
「ただいま、メイの具合はどうかしら」
ひらりとシャイロの背から降りながら、お腹に仔がいる牝馬のことを聞いてみる。
順調ですよ、とロジャーが請け合う。
「馬は多く見てきましたけど、あいつほど優秀な牝馬もそういない。均整のとれた馬体で毛色のいい仔を産んでくれるので、いつもいい値で売れますから」
「メイのおかげでこの厩舎も維持できるってわけね」
努めて明るく口にしたものの、そこにある苦い現実を意識せずにはいられない。
メイが産む仔をロジャーが仕込んで高値で売ることで、厩舎はようよう保っているのだ。
新しい馬を増やすような余裕は無い。
メイが仔を産めない馬齢になったら…
「ごめんなさいね、ぼうっとして。そろそろ戻りましょうか」
テスは馬の首すじをかるく叩いて、やさしく語りかけた。
厩舎に戻ると、ちょうど厩舎係のロジャーが馬たちに夜のまぐさを準備しているところだった。
お帰りなさいませお嬢さま、と陽に焼けた顔に笑みが広がる。
「ただいま、メイの具合はどうかしら」
ひらりとシャイロの背から降りながら、お腹に仔がいる牝馬のことを聞いてみる。
順調ですよ、とロジャーが請け合う。
「馬は多く見てきましたけど、あいつほど優秀な牝馬もそういない。均整のとれた馬体で毛色のいい仔を産んでくれるので、いつもいい値で売れますから」
「メイのおかげでこの厩舎も維持できるってわけね」
努めて明るく口にしたものの、そこにある苦い現実を意識せずにはいられない。
メイが産む仔をロジャーが仕込んで高値で売ることで、厩舎はようよう保っているのだ。
新しい馬を増やすような余裕は無い。
メイが仔を産めない馬齢になったら…


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)