無理やり結婚を迫られていたら、助けてくれたのは最愛の元カレでした



だって最後に見た姿よりも、顔つきが変わって、纏う空気も大人の自信と色気に溢れていたから。

「どうして…?」

(あなたがここにいるの?)

「ど、どちらさまですか?」

「部屋をお間違えでは?」

相手方の両親は戸惑いながらも、退室するように促す。

「突然申し訳ありません。わたくし、藤岡 秋(ふじおか しゅう)と申します」

「藤岡 秋って…、どこかで聞いたことがあるような…」

「確か藤岡ホールディングスの社長が最近変わって、その人の名前が…」

「はい、私が藤岡ホールディングス代表取締役社長の藤岡です」

会社の名前には聞き覚えがあった。

就職先を探すとき候補に入っていて、結局は両親に履歴書を出すことすら許されなかった。

その時はまだ、白髪交じりの厳格そうな50代くらいの男性が社長だったはずだ。

会社のプロフィールに写真が載っていた。