「ゆうれい?」

「わざとやってる?その駆け引き」

「駆け引きって…」

「俺のこときらいって言ったり、優しくしたり」

「…ゆうれいがいじわる言うからきらいって言っただけ。本当にきらいなわけないじゃん。それにお腹空いたーってそんな子どもみたいな目されたらほっとけないよ」

「俺にだけじゃないでしょ。風にもおんなじように優しくするんだよね?」

「………するよ。しないわけないじゃん」

ゆうれいがわざとみたいに音を立てて大きく息を吸って、吐いた。

感情が顔に出やすいひと。

そんな顔されたってそんなこと分かりきってることじゃん…。

「あーあ。………あーっ!ほんっとにもう…俺のことでそんな風に顔赤くしたりしたことないくせにさ…」

あぁ、一緒だって思った。

いつだったか、こころちゃんと話しながら恥ずかしそうに照れた顔をしたかっちゃんを見て、
私の前では絶対そんな表情はしないって落ち込んだっけ。

ゆうれいもそれを私に感じていて、
かっちゃんに恋をしている私とおんなじ感情を抱くのなら、
ゆうれいが私に恋をしているっていうのも本当なんだ、なんてこの瞬間に強く実感した気がした。

だったらなんで、私はゆうれいに恋をしなかったんだろう。

かっちゃんがどうしてもこころちゃんを好きで、
もしこころちゃんも同じ気持ちなら、二人は幸せになれる。

私だってスパッとかっちゃんのことを諦めてゆうれいの気持ちに応えれば、
私達だって幸せになれるのかな…。

そんな妥協案でゆうれいに逃げるような人間にはなりたくなかった。

ゆうれいは言った。
俺のところに逃げてきてって。

その言葉を鵜呑みにしてゆうれいを好きになったふりをすることが、
この世で一番ゆうれいを傷つける方法なんだってことくらい、分かりきっていた。

ゆうれいがなんて言ったって、大切な親友だ。
自分の叶わない恋のために親友を不幸になんてしたくない。

なのに優しくするたびに、大切な親友だって伝えるたびにゆうれいは苦しそうな顔をする。

私が酷く扱って、抜けない毒を植え付けることを強く望んでいるみたいに。