「茅野さんだけがダメならさ、柳達も来ていいし。ね?遊ぼーよ」

「絶対遊ばないから。ゆめにちょっかいかけないで」

「なんでだよ。いーじゃん。お前、茅野さんと付き合ってるわけじゃないだろ?成田だって彼女いんじゃん」

「彼女…?」

呟いた私に、男子は「市原さん。違うの?」ってニコッてした。

胸がズキンってして嫌な感じだった。

「付き合ってねーし、結芽に余計なこと言うな」

いつの間に来たのか、かっちゃんが男子の後ろからゆうれいとの間に割って入った。

「うわっ。来ちゃったよ、保護者が」

「なんだよ、保護者って」

「お前らのガードが固くて茅野さんを誘えないつってんの」

頭を掻きながら、体操服とジャージの入ったトートバッグをぶらぶらさせながら男子は教室を出ていった。

「かっちゃん…」

「結芽、大丈夫か?」

「うん…。なんかごめんね?かっちゃんが変な言い方されちゃったよね」

「結芽はなんも悪くないだろ?なんかされたらすぐ言って?」

かっちゃんが頭をぽんぽんってしてくれた。

教室を出ていくかっちゃんの後ろから、ゆうれいが腑に落ちないって顔をしてついていく。

「結芽、早く着替えいくよ。どうした?」

「あっ…ううん。なんかあんま喋ったことない男子にね。今度遊ぼうよって言われて…困ってたらかっちゃんが助けてくれて」

「あー、あいつらでしょ。女遊びばっかしてるって一年のときから噂だよ。気をつけなね」

「うん…」

どうせ私も都合よく遊べる女子として選ばれただけで、
そんなことは正直どうでも良かった。

それよりもショックだったのは、
やっぱりみんなには、かっちゃんとこころちゃんが付き合ってるって認識されているってこと。

こんなに近くに居ても私はかっちゃんの彼女には見えなくて、
事実じゃないのにこころちゃんはそう見えるんだ。

ドクン、ドクンって嫉妬で心臓が大きく鳴って、痛かった。