毒で苦い恋に、甘いフリをした。

「窓に映る柳くんはね、ずっと私とは反対のほうを向いてた。茅野さんのほうをね…。だから私には柳くんの後頭部しか見えなくて。でも表情が見えなくても分かってた。またあの、愛おしそうな、私の大嫌いなカオをしてるんだろうなって。こっちを見て欲しかった。茅野さんなんて消えちゃえって何度も何度も呪ってた」

「だったらこんなことしないでかっちゃんにもゆうれいにも本当のことちゃんと話せばいいじゃない!」

「それだけじゃ辻褄合わないし、なんで私だけがヤな女になんなきゃいけないの?あんたにも原因があるんだから道連れでしょ?」

鳴り続けるスマホを荒い手つきでタップした。

グループ内にも通知が何通か来ているけれど、それよりも動いているのは個別のメッセージだった。

ニカとゆうれい…大量のメッセージが送信されている。

ニカはグループに添付された動画はなんなのか、そしてゆうれいもニカも、今どこに居るのかをずっと聞いてきている。

こんな状況、とてもじゃないけれど説明できない。
居場所も知られたくない…。

ゆうれいは事情を知っているけれどニカにはまだちゃんと話せていないのに。
感情的になっているこころちゃんの口から何を言われるか分からない。

でも…本当にそうなのかな…。
こうなった原因が100パーセントこころちゃんにあるわけじゃないって、本当はもう気づいている。

私が蒔いた種だ。

勝手に失恋したことも、
ゆうれいを利用したことも。
そのくせにかっちゃんから離れられないことも。

こころちゃんはたぶん、間違っていない。

間違っていないけれど…こんなことをするこころちゃんが………憎い。

かっちゃんからのメッセージは、たった一言。

「あれ、どういうこと?」

それだけだった。

誰にも返信できないまま、「お祭り騒ぎだねぇー」って楽しそうに笑うこころちゃんの声を聞いていた。