毒で苦い恋に、甘いフリをした。

「動画撮りながらもね、体の奥のほうから沸々と怒りみたいなものまで沸いてきちゃってさ、大変だったんだよ?あー、こいつは本当に私の大切なものをとことん奪っていくんだって。だから本格的に壊しちゃおっかなって。これの次の日だったでしょ?風くんと付き合うきっかけを作ったのは茅野さんだよ?」

「復讐ってこと!?ゆうれいが私とこんなことするからかっちゃんを利用したの!?」

「あっはは!さっきから茅野さんが言ってること、まるで自己紹介みたいね?」

「自己紹介?」

「私をどれだけ責めたってそれは茅野さんが柳くんにしてきたことでしょ?あんたが私を憎めば憎んだ分、あんたがしてきたことも浮き彫りになるんだよ」

「っ…」

「あっ、そうそう!あれも笑えたなー!ほら、浴衣」

「浴衣って…まさか…」

「たまたまお揃いになっちゃったって思ってた?わざとに決まってるでしょ。風くんに菊池さんと浴衣買いに行くって言ったでしょ?日にちや時間どころかご丁寧に場所まで。浮かれてたの?ぜーんぶ筒抜けだよ?」

「ずっと見張ってたってこと?」

「うんっ。お揃いの浴衣を着て、風くんがどれだけあんたに関心がないか教えてあげようと思って。本当に期待通りでもう笑いこらえるの大変だったんだから!あは…あははははっ…あの時の茅野さんのカオ、思い出しただけでお腹痛い」

「さいってー…」

「茅野さんの鼻緒が切れちゃったことだけが想定外だったなー。結局柳くん、取られちゃったし」

つまんなそうに上靴の先を屋上の地面にぐりぐりと擦り付けながら、こころちゃんは無表情で私を見た。