毒で苦い恋に、甘いフリをした。

その日の夜。

ゆうれいに電話した。
スマホ越しに聞くゆうれいの声はいつもと違って聞こえた。

「どーしたん?珍しいね」

「ニカに何か言った?」

「唐突だねー。何かってなに?」

「私とゆうれいの関係…!」

「親友でしょ?それすらも別に言ってないけど」

「こころちゃんには?」

「市原さん?それこそ別に…なに?席が隣だからってなんか焦ってんの?」

「真剣に話してんの!こころちゃん、何かを勘繰ってる。私達のこと、変じゃない?ってニカに言ったみたい」

「…ふーん。変なのはほんとじゃん?言われんのが嫌ならちゃんとすればいいんだし。俺からしたらゆめのほうが頑なだよ」

「なにそれ…。ゆうれいだって中途半端な気持ちで彼女になられたほうが嫌じゃない?絶対疑ったりするよ!?」

「そうかもね。たまに不安にくらいはなるかもね。でもいつまでうじうじしてんだろーとは正直思うよ」

「うじうじって…」

「なんかゆめの中にだけとんでもないルールブックが存在してるみたい。失恋を吹っ切るために曖昧な気持ちでも新しいことに踏み出すのって悪いことじゃないと思うんだけど。そこ神経質なんだったら俺としてたことってなに?」

完全に私を責める言い方。
でもゆうれいが言ってることが正しい。

誰が聞いたって私の言動は矛盾している。

ゆうれいに誠意を示すなら関係性をきちんとするべきなのに。

かっちゃんを自分の中から完全に消せないままで、ゆうれいとうまくやっていけるはずがない。

「もういい。分かった」

「分かったって?」

「もう自分でどうにかするからいい!」

「ちょっとゆめっ…」

ツー…ツー…ツーって通話が終了した音だけがスマホから聞こえてくる。

ゆうれいは私を拒絶したわけじゃない。
向き合おうとしてくれてるのになんでこんなに子どもっぽい態度を取ってしまうんだろう。

かっちゃんを好きでいることを責められているみたいで、正論を認めたくないのかもしれない。

間違ってるのは私なのに。