毒で苦い恋に、甘いフリをした。

「でも隣なんだしさ、前より接点増えたわけじゃん?」

「ほんとラッキー。神様ありがとーって感じ!」

隣って、もしかして。

「あっちはあっちで隣同士なんて凄すぎない?」

「そうなんだよね。それでさ、どうせまたコロッと好きになっちゃうと思うんだよね?さすがに呆れて幻滅するでしょ。そしたら一気に押すの」

こころちゃんが話してるのってまさか…。

「早く驚かせたいな。どんな顔してくれるんだろ。あーもう、ほんっとに可愛い、柳くん!」

「あはは!驚かせたいのは柳くんだけじゃなくて、あの女もでしょ」

「マジそれ」

「ゆめ?」

「…っ!!!」

後ろから急に名前を呼ばれて、
肩がビクーッて震えた。

ドアに掛けたままだった手も震えて、ドアがガタンって音を立てた。

教室の中の二人が目を見開いてこっちを見た。

「ゆうれい…いつから…?」

「今だけど。なにしてんの」

「たっ…体操服忘れちゃって…戻ってきた」

「ドジー。入んないの?あれ、市原さんじゃん」

ドアに張り付いたままの私に覆い被さるようにして、ゆうれいが腕を伸ばしてドアを開けた。

こころちゃんと友達は固まっている。