花火大会以降、ニカと黒崎くんは無事、恋人同士になった。

夏休み最後の日。
ニカと映画を観に行った。

観たい映画があったわけでもないのに、
なんとなく映画が観たいよねって合流した私達は、
映画の醍醐味ってポップコーンだよねなんて言い合って、

映画館のポップコーンの味って、映画館でしか味わえないよねなんて言いながら、
どっちも別に好きじゃないアクション映画を観た。

詳しくない私達からは「身体能力スゴ…」とか「音えぐかった」とかしか感想も出てこなくて、
夏休み最後の思い出は「やっぱり映画館のポップコーンは最高」になった。

「ね、どっちから告ったの?」

「なーにが」

「何がって一個しかないじゃん」

映画のあと、カフェでパンケーキを食べた。
生クリームが苦手だけど、フルールがたくさん乗っていて食べやすかった。

花火大会の日、ゆうれいが「ゆめ、やっぱり足が痛いって」ってニカに連絡してくれて、
そのまま先に帰ることになった。

謝らなきゃいけないのは私のほうなのに、
ニカは私を一人にしたことをすごく謝っていて申し訳なかった。

「んーっと、黒崎から」

「へぇー!やるじゃん、黒崎くんっ」

「黒崎のこと冷やかさないでよねー」

「そんな勇気ありません。花火大会の日?」

「うん。花火が終わったらさ、私達も帰りはバラバラになって。そん時に」

「なんて!?」

「別に普通だよ。今更だけどちゃんと付き合おうって」

「熟年カップルみたい」

「熟年!?」

「冗談です。でもよかったね。ほんとにおめでとう」

「ありがとう、結芽」

「ほんとにうれしい」

「なんで?」

「大好きな親友が本当に好きなひとの彼女になれたんだもん。うれしいに決まってんじゃん」

「…いい子だねぇ」

「そうだよ。知らなかったの?」

「知らなかったー」

「えー」

「結芽のおかげだよ」

「いやいや。なんもしてないから」

「結芽が諦めちゃだめだって教えてくれた。花火も結芽が誘ってくれたからだし。結芽がいなかったらなんにも変われてなかった」

「そう?ならよかった」

「うん。ありがとう」

「へへ」

こんな風に、ニカと素直に恋バナをしたのは初めてかもしれない。

ニカと黒崎くんの恋を応援したいって心から思った。

ニカが悲しむのだけは絶対に嫌。
ニカの可愛い笑顔を守るためならなんでもしたいって思った。